小説
アーヤス地方の最東に位置する町・シェンタウン・・・。
アーヤス地方の東側は基本的に山岳地帯が多く続き、特に高い山では標高3000メートルを軽く越す。
また、その山岳地帯の中にある広大な鉱山が別地方から来た一部の観光客の隠れた名所となっていたりする。
特に博物館などといった施設があるわけでもなく、ましてや炭鉱を見学出来たりなどのサービスも実施していない。
ピッピの大量発生・・・。
それがこの鉱山の町・シェンタウンの一つの観光スポットとなっている。
元より野生の目撃例の少なさが目立つピッピの前代未聞の大量発生は地元の人間たちも驚いた。
ピッピで元より有名なカントー地方のおつきみやまでもこのような大量発生は例がなく、ポケモンマニアの間では話題となっていた。
しかし、ピッピの大量発生はほんの一時期なもので、現れる時期も全くの不定期、予測不能なのだ。
早くて1週間で来る場合もあれば一月経っても現れないことがある。
この事に関しては学者たちも頭を抱え悩ませている。
その一方で地元の人間たちは急にやってきた観光客達に頭を悩ませていた。
元々女人禁制とまで言われていた炭鉱を他所者の素人に荒らされる事には男たちは怒りを露わにしていた。
しかし、そんな彼らにも意外な嬉しいサプライズが待っていた。
それは”つきのいし”である。
大量発生後の炭鉱には決まってその場にいたピッピと同じ程の数と言っていいほどの大量の”つきのいし”が転がっていた。
しかも、純度や色合い極めて高くコレクター達の間では高値で売れ、その為今まで若干枯れ気味であった炭鉱の町も多少の潤いを見せ始めた。
そんな事がしばらく続いた三日前・・・
突如、シェンタウン一帯に大地震が起きた。
らき☆ぽけ
第14話「シェンタウン大地震の一件。。」
ところ変わって、トウハトシティ〜ゴートゥシティの間の森。
トウハトシティ側から入ってすぐの所にあるオヤカタ率いる山賊のアジト。
そこに一人の訪問者が手持ちと思われるブーバーと共に現れた。
その訪問者はインテリメガネに自分の顔の2倍はあるであろう大きい紫色のアフロをした小柄な人物で、正装のつもりなのか明らか子供用の背広にサスペンダー付きのYシャツを着ており下は半ズボンで見るからに間抜けな格好をしていた。
そんな彼の後ろには彼の足となる乗り物なのだろうか、黒い炊飯釜のような円盤形の乗り物が浮遊していた。
「お邪魔してよろしいですか?」
静かながらも重く、冷たい彼の言葉にアジト内の山賊達全員が訪問者の存在に気づいた。
「なんだあんちゃん?何か用か?ここはアーヤス一の山族”ハク一家”だぜ?」
「ここに入るからにゃあ、それ相応の土産があんだろうなぁ?」
訪問者の行く手を山賊の二人の男が遮った。
しかし訪問者の彼は躊躇うことなく歩みを続け、二人の男の間をスルリと抜け去った。
あまりに自然に、堂々と横切っていくその彼にさっきまで粋がっていた二人は呆気にとられ、身を竦めてしまった。
そんな訪問者の前を今度は山賊団の紅一点であろう緑色のノンスリーブの服に赤いマフラーを身につけた細身の女が塞いだ。
「ちょっと!挨拶も何にもなしに人の家の門をくぐろうなんて少し不行儀が過ぎるんじゃないの?」
その言葉にようやく訪問者は足を止めた。
「成程・・・。これは失礼。私はリーザフ。あなた方のような裏稼業の方々ならば少しは私の名くらいはお耳に入ってると思いますが・・・。」
少し、鼻にかけた感じに喋る訪問者・リーザフの言葉とは裏腹に山賊メンバー皆、小難しそうな顔をして首を傾げている。
どうやらお耳には入ってないらしい。
リーザフは少しムッと顔をしかめるも、さほどの動揺は見せず話を続けた。
「え〜・・・で、お願いですがあなた方のトップをお呼びしていただけないでしょうか?」
「?ウチのオヤカタに何か用なのかい?」
女の表情が先よりも更に険しくなった。
明らかに警戒を強めている感じである。
「えぇ・・・少し商談の方を・・・。」
リーザフは周囲の視線など気にする様子もなく自分の話を勧めていく。
その態度に危険を感じながらも女は周りの男たちにオヤカタを呼んでくるようにアイコンタクトで指示をする。
恐らく、このままオヤカタを呼ばすにここで交渉を粘っている方がなお危険と判断したからであろう。
彼女にそう思わせるほどに、リーザフは独特の狂気に満ちていた。
・・・泉こなた達訪問から翌日のことであった。
そんな一方・・・同刻アーヤス地方東のシェンタウン外れの炭鉱。
「ココドラ、”アイアンヘッド”!」
「コー・・・!!」
一人の少年がココドラに先日の地震で天井が崩れて塞がってしまった炭鉱入口めがけて”アイアンヘッド”をひたすら指示していた。
しかし、ココドラの小さな体では入口の岩たちを崩すこともままならない。
「はぁはぁ・・・ちくしょう!!絶対にここに何かあるはずなのに!!」
彼がそう思うのには理由がある。
それは地震が起きた日の3日前のことであった。
パートナーであるココドラと共にこの炭鉱でバトルの特訓をしていた少年・ハセ。
彼はその特訓中に遠くから聞こえる何かが転がる音を耳にした。
ハセは音の場所である炭鉱より数十メートル離れた岩場を覗くと、そこには数人のメットを被った男達と一匹のイワーク、そして数体のマルマインがいた。
そして男たちの後ろのある荷台付きのトラックから少し小太りのおかっぱ男が現れた。
男の体の到る所は貴金属類がジャラジャラと身に付け、見ただけでその男の普段の生活ぶりが伺えるようだった。
「サブロウ様!御苦労さまです。」
メットの一人がサブロウと呼ばれる先ほどの小太り男の下へ駆け寄った。
「サブロウ様、こちら、既にセッティングは完了いたしております。」
「ん!御苦労だったな。後はあっちに任せておきなさい!!」
たるみきったお腹をボリボリと掻きながら、イワークを自分の前に来させた。
「”あなをほる”!」
「イワー!!」
イワークは雄叫びを上げながら地面に穴を掘り、地下へとドンドン潜っていく。
「大体こんなもんだろ?」
サブロウがそう言うとイワークは地面から出てきた。
そして、次に数体のマルマインを先ほどイワークが掘った穴に次々と入れていく。
そしてマルマイン達はイワークが空けていた横穴をズンズンと進んでいく。
「さてと、あっち達もここから離れた方がいいかね?」
「は、はい!」
サブロウの一言でメット達は次々とトラックに入っていく。
そして、最後にサブロウがトラックに乗り込むと、早々にエンジンを駆けた。
「急いでくれよ?10分以内になるべく遠くにね?・・・全くギル様もこんな危険な任務をどうしてあっちに任せるんだろう?」
サブロウがそう言うと、車は豪快に土煙りを上げながらその場から姿を消した。
サブロウ達の車が見えなくなると、遠くで見ていたハセとココドラは少し周りを警戒しながら、イワークの掘った穴に近づいた。
「さっきのおっさん達なにやってたんだ?この穴・・・。こんな穴掘っていいって許可を出したってマウンじいちゃん許可なんか出してたっけ・・・。」
ハセがそう思い考えに耽っていたその時だった。
ココドラが何かを感じ始めハセの服の裾をくわえながら慌てだした。
「コーコ!コーコ!」
「・・・?どうした?」
訳も分からずハセはココドラに引っ張られるまま少し離れた平地の真ん中までやってきた。
「一体どうしたんだよココドラ?」
ハセの言葉を聞かずココドラはハセを守るように自分の周りに不思議なベールで包み込んだ。
「”まもる”?本当にココドラどうし・・・」
ド――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ン!!
ハセの言葉を遮るかのように激しい爆音と激しい地響き・・・。
そして先ほどの穴から凄まじい爆炎と爆風が上がった。
「・・・な!?」
あまりに突然な出来事でハセはボー然と口をあんぐりと開けてしまった。
地響きは数分続くと収まり、ハセにようやく冷静さを取り戻させた。
「なんだったんだ今のは?」
先ほどの轟音とは打って変わっての静けさを取り戻した周り一帯・・・。
見るとあちこちでがけ崩れが起きており、もしココドラが安全な場所に誘導せず”まもる”で自分をかばってくれなかったらと思うとゾッとする。
「ありがとうな・・・ココドラ!お前がいてくれなかったら俺もしかしてがけ崩れに巻き込まれ・・・」
ココドラの頭を撫でながらハセはある事に気がついた。
「鉱山!」
言葉より先に足が動いていた。
向かった先はハセとココドラがさっきまでバトルの特訓をしていた鉱山だった。
走ること数十秒・・・。
ハセの前には無残にも天井が崩れ入口が塞がってしまった鉱山があった。
激しい脱力感に襲われ、ハセは膝を地についてしまう。
「なんてこった。鉱山が・・・。」
鉱山の町と銘打ってるのは名ばかりじゃなく鉱山が使えないという事実はこの街の人間たちには死活問題。
それはまだ12歳になる子供のハセにだって分かることであった。
「畜生・・・あいつら・・・くそっ!穴の中にマルマイン・・・考えたら分かることだった!なのに俺は呑気に・・・・」
こみ上げる自分自身の不甲斐無さにハセは地面に拳を何度もぶつけた。
翌日・・・。
ハセは、昨日のメット達の一件を誰にも口外はしなかった。
ハセの記憶の限り、あの集団は只者じゃない。
最近巷で暗躍している謎の集団という事がハセには分かっていた。
尤もそれに気がついたのはあの地震の後の町人たちの集会の最中であった。
喧嘩っ早いこの町の人間たちのことだ。
今、事実を知ったとなると、アテもなくどこかに飛び出し適当に喧嘩を売り状況を悪くさせるのは容易にハセには想像できた。
それが、犯人グループとなると尚更である。
ハセが第一に考えたのは犯人確保よりもこれ以上の状況悪化の阻止であった。
勿論、彼も昨日の連中に怒りを覚えてないわけじゃない。
どうにか奴らを懲らしめて警察に明け渡そうかと考えていた。
出来ればこっそりと密やかに事を成したい。
そこで、ハセはあることを思い出した。
「・・・よし。ビンゴ!!」
ハセは昨日、サブロウ率いるメットの集団たちを覗き込んだ岩かげにいた。
ハセが思い出したこと・・・それは昨日から地中に放置されている数体のマルマインであった。
もしかして、今日回収されるかもしれない。
いや、きっと回収にくるであろう。
普通なら鉱山の前で穴を掘ってそこにマルマインを放り込めば事は済むが、マルマインを回収する際にそこへ行っては地震直後のこともあって人に見られる可能性が十分に高い。(まず大穴見られる時点でNG)
しかし、少し離れた場所に穴を掘り、横穴を作れば、町人に姿を見られる事は少ない。
爆発の後のがけ崩れの危険性があるのでその日に回収という可能性も低く、彼らが車で来てたことから考えて地震直後の夜の鉱山に来る可能性も薄かった。
それほどまでにあのサブロウと呼ばれたあの小太りの男からは小物臭さが漂っていた。
そう思い、ハセがいざこの場所に来てみるとハセの予想通り、昨日のサブロウ率いるメット達がいた。
(昨日の今日ではまだ流石に来ないと思ってたけど・・・。意外だったな。まさか奴らのアジトは意外に近くに・・・。)
そんなことを考えていると、メット達は昨日イワークが空けた穴に次々と入っていく。
そして、次々と瀕死のマルマインを回収していく。
「えーっと・・・1・2・3・4・5・6・・・・ん?」
回収したマルマインの数を数えていたサブロウがあることに気がついた。
「おい、このマルマイン一体多いんじゃないか?あっちは5体しか用意してねーぜ?」
そう言われメット達もマルマイン達を数え直す。
確かにマルマインはメット達の用意してきた数よりも一匹多かった。
「はぁ・・・言われてみれば・・・。どうしましょう・・・。」
「どうするって・・・あっちはもうこの最初から用意された5匹のマルマインしか手持ちに入んねえよ?」
「そうですねぇ・・・我々はモンスターボールを持ち合わせておりませんし・・・。」
余ったマルマイン一匹に弱り、考える数人の男たち。
すると、サブロウは名案を思い付いたかのように指を鳴らした。
「放っておこう!元より一匹余るはずないのに、それがいるってことはこの辺で散歩してて誤って穴に落っこちたんだろ?ということはこいつは完全な部外者!あっちらが世話することねえよ!」
そう言うとサブロウはすっきりしたようにこちら側のマルマイン5匹全てを回収すると汚い高笑いをしながら車に乗り込んだ。
「おい?なにやってんだ?先にいくぞぉ?」
サブロウの言葉に、先ほどまでサブロウのあまりにさっぱりした態度に呆気を取られていたメット達は慌てて車に乗り込んだ。
「いやぁ・・・崩れる前に見つかったらとかハラハラしたけど無事終わって何よりだぁ。」
サブロウがそう言うと、トラックは発進し昨日と同じように土煙りを上げて、その場から立ち去った。
瀕死のマルマインを一匹残して・・・・。
サブロウ達の姿が見えなくなるとすぐにハセはそのマルマインの下へと駆け寄った。
「おい、お前大丈夫か?」
「コーコ!」
「マルゥ・・・。」
マルマインは爆発から一日放置をしていたからだろうか、かなりのダメージを負い意識もかなり薄かった。
思いの外、深刻な状態にハセは急いでポケモンセンターへと連れて行った。
「大丈夫よ?少ししたらまた元気になるわ。」
「そうですか?」
ジョーイさんの言葉にハセはひとまずほっと胸を撫でおろす。
「体に深いダメージを負ってるけどね?大方、昨日の地震でダメージを受けてその時の刺激で爆発したってところね?マルマインが自らの”だいばくはつ”であんな深刻なダメージを受けることはないもの。」
「そういうもんすか?」
「マルマインの場合の”だいばくはつ”は体の中で溜まった電気エネルギーを定期的に爆発させるものだから・・・まぁ、しばらくはその衝撃で体力を大きく消耗するけどね?」
口では深刻と言いながらも少ししたらまた元気になるといった矛盾した言葉が出るのはジョーイさんの腕の凄さからだろう。
そう感じると、ハセにはジョーイさんが無駄に神々しく見えてしまった。
それと同時に妙な後ろめたさが出てしまった。
(このマルマインが昨日の大地震を引き起こした直接的な原因だなんて・・・・言えねーよな。)
昨日の大地震で怪我をしたポケモン達の治療に追われるジョーイを見ながらハセはそう思った。
「はぁ・・・はぁ・・・。くそっ!やっぱり無理か?」
そして、翌日の今日・・・。
例の鉱山はまだ崩れる可能性があるとされ、誰も近づかない。
そんな周りからの忠告を無視してハセはそこへと来ていた。
ハセは昨日のサブロウの言葉からこの鉱山になんらかの秘密があると踏み、必死に入口を開こうとココドラと共に頑張っていた。
しかし、崩れた岩盤をどうにかできるはずもない。
ハセは少し休憩とココドラに告げるとその場に座り込んだ。
「ちくしょう・・・こうなったら”あなをほる”を使えるポケモンゲットして下から入るしか・・・だけど下手なことしたまた崩れそうだな・・・。」
そう考えながらハセは次第に息を整え、立ち上がった。
「よし、ココドラ!今からちょっと遠くまで行ってディグダとかゲットしに・・・」
ハセが気合いを入れていると、後ろから何かが転がってくる音が聞こえた。
ハセが後ろを振り返るとそこには昨日のマルマインがいた。
「うぉ!?おま・・・!!」
ハセの言葉も待たずにマルマインはハセに擦り寄った。
どうやら昨日助けられた感謝をしているらしい。
「落ち着け落ち着け・・・。お前元気になったんだな?」
ハセが嬉しそうにマルマインの体をポンポンと叩いた。
それを見てココドラは身を竦ませた。
”だいばくはつ”にビビっているらしい。
まぁ一昨日、目の前で集団とは言えあんな爆発を目の当たりにすれば至極当然のことだが、ハセは全く物怖じせずマルマインにペタペタ触れている。
「いやぁ、お前も災難だったなぁ?勝手に狭い穴蔵に押し込まれてあんな状態で丸一日放置だなんて・・・。」
ハセがその話題を持ち出すと途端にマルマインの表情が曇った。
どうやら、そのせいで鉱山が崩れ、村を色んな意味でメチャクチャしたことを申し訳なく思っているらしい。
「気にすんな?お前が悪い訳じゃねえよ!それよりよぉお願いがあんだけど・・・昨日、お前を置き去りにしたあのサブロウってデブ親父のアジトによければ案内を・・・」
ハセがそう言った時だった。
ハセの背後から不意に声がした。
「坊やぁ?あっちのお腹がなんだって?」
その声にハセの全身が固まった。
固まりながらも、ハセの頭は常に冷静に動いていた。
(うそだろ?もうここには来ないと思ってたのに・・・なんで昨日の今日で・・・。つーか俺の耳センサーに引っ掛からなかった?)
「おいおい、連れないなぁ。こっちにお顔を向けてくれよぉ?」
ハセはおそるおそる顔を後ろに向けた。
そこに立っていたのは、先ほど自分が”デブ親父”と称したサブロウと彼と同じ程の大きさをしたあやつりポケモンのブーピッグがいた。
「ブピー!」
「やぁやぁ?そんな怖い顔しないでくれたまえ?」
サブロウの嫌味ったらしい笑みがハセの体を自然と金縛りにした。
「おじさん・・・ここに何の用?」
「あくまで呆けるか?イラつかせる子供だねぇ・・・まぁいいだろう。おじさんがここに来た理由はねぇちょっと情報を小耳に挟んだりしたからだよ。」
「情報?」
「シェンタウン、”大地震”の日に鉱山から少し離れたの空き地で探偵ごっこをして遊んでいる子供がいるってね?」
「・・・!?」
全く身に覚えのない話。
あの時一緒にいたのは自分の手持ちであるココドラだけ。
ハセ自身はあの時あの光景を見ながらも周りに十分な警戒をしていたつもりだった。
少なくともハセの周りでそういった不審な”音”はしなかっただろう。
ハセにはその自信があった。
しかし、見られていたとなると昨日のこともハセには合点がいった。
「昨日の今日でマルマインを回収したのは本当にその現場を見ていた人物がいたかどうかを確認するためか!」
「ご名答!マルマインの回収を予想して好奇心旺盛な厄介虫が見に来るであろうと思って。万一君が誰かに漏らしたのだとしたら尚のことだ。」
まんまと嵌められた。
ハセは悔しさから唇を噛んだ。
「君には熱りが冷めるまでこちらでお預かりしなければならない。」
「なんだと!?」
「そう睨まないでおくれ?こっちだってうちの上司が持ってきたチビッ子の面倒を見てて本当は君の面倒まで見ていられないんだ?」
あくまで下手に出るサブロウにハセは警戒を許さない。
いつでも戦えるようにココドラもハセの前で戦闘態勢にはいっている。
サブロウもそれに気づくと、面倒くさそうな表情をしながら後ろにいたブーピックをさりげなく前に出した。
「参ったねぇ?あっちも平和主義者。バトルとか苦手なんだけどね?」
出っぱったお腹をボリボリと掻きながらサブロウは敵意むきだしにしているハセを睨みつけた。
そのサブロウの睨みに覚悟を決めたハセは最後に口を開いた。
「最後に一つ・・・。」
「なんだい?」
「ここまで・・・・俺の後ろまでどうやって来た?」
「・・・瞬間移動術。」
「なんだと・・・?」
ふざけている様子もないサブロウにハセは納得がいかない。
そんな事に頭を働かせているとサブロウが一歩、また一歩とこちらに歩み寄ってきた。
「じゃあ、こちらも最後に一つ・・・。その君のココドラの態度から見て・・・あっちのお願いの答えはNOと見ていいのかな?」
「・・・あぁ!」
その瞬間・・・サブロウの口の両端が激しく吊り上がった。
サブロウの怒り籠った笑みを見て、ハセは戦うことを選択をした。
今、ここで逃げるとしたら、どこへ逃げる?
町?否。恐らくアテもなくこの延々と続く山岳地帯を逃げ回ることになるだろう。
運よくこのサブロウを撒いたとしても、次に目を付けられるのは十中八苦、シェンタウンである。
それだけは避けるためハセはサブロウを前に立ち向かった。
「ココドラ、”たいあたり”!」
「ふん、賢明な判断だねぇ?だが、それがはたして正解だったかな?ブーピック”アイアンテール”!」
ココドラの”たいあたり”をブーピックが鋼の尻尾でいとも簡単に止め、そのまま弾き飛ばした。
「ココー!」
「ブピー。」
「負けるなココドラ!!”アイアンヘッド”!!」
「コココー!」
「ブーピッグ”きあいだま”!!」
ブーピックは力を込めて両手にバレーボールほどのエネルギー球を作り出すと、それを向かってくるココドラにぶつけた。
「ココォー!」
”きあいだま”はココドラを直撃すると、そのままの力を保ったままその後ろにいたハセをも吹き飛ばした。
「マルル!!」
あまりに一瞬な事にマルマインは慌てふためく。
そして、ハセに歩み寄るサブロウを見てマルマインは咄嗟にハセの前に立ち、サブロウの行く手を塞いだ。
「マールゥ!」
マルマインは体から”いやなおと”を発しサブロウ達の動きを止めた。
「ぐぅ・・・!!この・・・!ブーピッグ!!」
そうするとブーピッグは耳を折りたたみながら”きあいだま”を作りマルマインにぶつけた。
マルマインにそれが直撃すると”いやなおと”は消えた。
「ふん、口ほどもない。じゃブーピッグそいつを抱えて?あっちあんたの肩に捕まるから」
ブーピッグが肩をにハセを担いだその時だった。
サブロウの足をココドラが”たいあたり”をかました。
「いってぇよぉ!!」
なんとも情けのない声を上げるサブロウ。
無理もない。小さいとはいえ鋼タイプでカッターい鎧に包まれたココドラの”たいあたり”を脛にくらったのだから。
「ちくしょう、この野郎め!・・・いってぇ!!」
怒りの勢いに任せてサブロウは思いっきりココドラを蹴り飛ばした。
そして、そのダメージもまた然るが故に再びサブロウの足には多大なダメージが走った。
もう間抜けとしか言いようがない。
「ブピー」
サブロウが片足を挙げながら喚いてると横のブーピックも騒ぎ出した。
「マルー!」
マルマインが煙を上げながらサブロウ達を睨みつけている。
サブロウ達の顔が凍りついた。
「おい・・・まさかお前・・・」
「ブピピー!」
「マァール!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
マルマイン決死の”だいばくはつ”は辺り一帯に広がり、シェンタウンに激しい地響きをも引き起こす。
それは、マルマインの中でも近年まれに見るエネルギーの放出量であった。
それから10分後・・・・。
”だいばくはつ”で全てのエネルギーを使い果たしたマルマインはその場から動かない。
はがね・いわタイプのココドラはなんとか”だいばくはつ”を最小限のダメージで済みはしたが、もはや動ける状態ではなかった。
周りには・・・誰もいない。
サブロウも、ブーピッグも・・・ハセの姿も・・・。
そんな時だった。
自分たちの下へ歩み寄る二つの足音。
ココドラはなんとか立ち上がろうと試みるが体が思うように動かず、足元のバランスを崩し、倒れ込む。
そんなココドラを、誰かが優しく受け止めた。
「ココ・・・?」
「大丈夫?」
それはとても優しい声だった。
ココドラはその人物に今、主人であるハセの危機を知らせようとしたがやはり体が思うように動かない。
そんなココドラを他所にその人物は共にいたもう一人の人物となにやら話し始めた。
「・・・さっきの爆発は・・・」
「・・・近くにトレーナーが見当たりませんね?」
「はい。なにか嫌な感じがする。」
そう言いながらその人物は立ち上がった。
「みゆきさん、とにかくこの子たちをポケモンセンターへ・・・。」
「はい、みなみさん。そうしましょう・・・。」
ポケモン世界7日目・・・。
高良みゆき、並びに岩崎みなみはアーヤス東に位置するここ、シェンタウンに訪れていた。
続く。
あとがき
どもぽちゃです。
遅くなりました。
というか遅過ぎw
まぁこれでもかなり忙しかったんです。
プラチナとかやってたしなぁ(駄
まぁここで語ることは特にないんですがなんかねぇコナンを書きたいんだよね?
歩美ちゃんとか和葉のラブコメとか書きたいんだが・・・まぁ当分先でしょうねw
次回はなるべく早く上げるよう努力します。
じゃ、また